半導体の技術者から40代でタクシードライバーに。「給与や待遇よりもワクワク感が欲しかった」
齋藤(さいとう)さん。タクシードライバー。国際自動車(kmタクシー)株式会社板橋営業所所属。2018年10月キャリア(中途)入社。隔日勤務。趣味はスノーボードや映画鑑賞。(取材:2019年2月11日)
齋藤さんは乗務を始めて2ヶ月ということですが、以前はどんな仕事をしていたのでしょうか?
三重県の亀山というところで、半導体の開発に携わっていました。
世界の亀山ですね!不躾ですが、給料も良かったのではないでしょうか…?
そうですね、かなり満足できる待遇でした。社会人になってからずっと技術者として仕事をしていたので、この先もそうだろうと思っていたのですが。
なぜ転職を考えたのですか?
三重県という土地が合わなかった、職種が変わった、製造業が下火になってきた、などの色々な要因が重なり、仕事にワクワク感が持てなくなったからです。楽しみながら働くことを大事にしてきた自分にとって、これは大きな問題でした。
ではワクワク感を求めて転職活動を始めたということでしょうか?
そうですね。42歳にして初めての転職活動でしたが不安はあまり無かったですね。いくら待遇が良くても心から満足することができなければ辛いだけなので。
転職先にタクシードライバーを選んだ理由はなんでしょう?
第一に、サービス業に魅力や将来性を感じていたことがあります。スマートフォンの売れ行きが中国でも減速してきているなど、物が溢れかえっている現在の状況を考えると、今後は無形のサービス業にシフトしていくだろうと思いました。
第二に、父親が個人タクシーを20年ほどしていたので、タクシーが身近な職業であったということです。運転も道を覚えるのも好きでしたので、これだったらワクワクしながら働けるだろうと期待していました。
それでも、タクシーは全くの未経験ですよね。
運転を仕事にすることだけではなく、サービス業ですらも未経験でしたが、ホームページを見て国際自動車(kmタクシー)は教育に力を入れていることが分かったので、飛び込んでみようと思ったんです。今は乗務を始めてまだ2ヶ月ですが、特に大変な苦労もなく進んでいるので、「自分はタクシードライバーに向いているのかも」と思っているところです(笑)。
未経験にも関わらず、特に苦労は無かったのですか!
道もあまり知りませんから、客観的に見れば苦労しているのかもしれませんが、不思議とこの状況を楽しめています。頭の中でどんどん道がつながっていくのが嬉しいんです。
それがワクワク感になったり?
そうですね。今日はどんなお客さまとの出会いがあるかな?と想像するのもワクワクしますよ。お客さまとお話しするのは思った以上に楽しいですね。
お客さまとはどんなお話しをされますか?
最近ですと、中目黒から歌舞伎町までお送りしたお客さまと40分くらいの道中ずっとお互いの身の上話で盛り上がりました。飲食店をいくつも経営し、人脈も広く、経験豊かな方でしたので、話題がつきませんでしたね。非常に刺激になりました。一方、ご年配のお客さまとわずか5分、10分の間ですがゆったりと天気の話や最近のニュースについてなど話すこともあります。タクシードライバーは色々なお客さまと出会うことができるので面白いんです。
車内でお客さまとお話することは多いのでしょうか?
もちろん話したくない気分のお客さまもいらっしゃいますから、そこは臨機応変に対応することを心掛けています。ですが、僕は話好きな方なので、僕の方から話しかけることは比較的多いと思います。お客さまを飽きさせたくないという気持ちがあるんです。渋滞にはまると「はあ」とため息をつかれるお客さまが多いのですが、せっかくご縁があって僕のタクシーにご乗車いただいたのに、ため息で終わらせてしまったら申し訳ないと思うんです。だから、できるだけ会話で楽しんでいただこうと思って、積極的に話しかけるようにしています。
どんな風に話しかけるのでしょう?
例えば、渋滞にはまってしまい動けそうにない時は「混んでいますね」くらいの軽い一言をかけます。そこから徐々に話を広げていくイメージです。この最初の一言がきっかけで楽しい会話に発展したり、車内の空気が変わったりするので、一言でもあなどれません。別に僕がお客さまを飽きさせない努力をしたところで、余分にお金をいただけるとかじゃないんですけど、少しでもお客さまに楽しんでいただきたいんです。それに「また乗りたい」と思っていただければ素直に嬉しいですしね。
今まで特に嬉しかった経験はありますか?
以前、外国人のお客さまをお送りしたときに、簡単な英語ではありましたが心を込めて接客をしたんです。すると、数日後に偶然またそのお客さまをお送りする機会がありました。広い東京でこんなこともあるんだな、と驚いていたら、お客さまが「またあなたのタクシーに乗りたいから連絡先を教えてくれないか?」とおっしゃるんです。これが嬉しくって!リピートしたくなるサービスを追求しているものの、タクシーの場合一期一会がほとんどですから、それまでは自分が評価されているのか、いまいち確認ができていなかったのです。そんなときに「また乗りたい」という言葉をかけていただいたので、自分の努力は意味があるものだったと思うことができて非常に心が温まりましたね。
素敵なエピソードですね!
仕事のモチベーションが上がりました。「次はどんなお客さまに出会えるのだろう?」と楽しみにタクシーを走らせています。
そんな齋藤さんの今後の目標を教えていただけますか?
今はまだ新人なので、道をお客さまに教えていただくことが多いのですが、今後はこちらからルートを提案できるくらい知識のあるタクシードライバーになりたいですね。あとはお客さまの意図を素早くキャッチして、適切な対応がとれるようになりたいです。一方的な接客ではお客さまの満足は得られないので、より質の高い接客をして、「また乗りたい!」と多くのお客さまに思っていただけるようになります!
応援しています!齋藤さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
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